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ウイルス肝炎にはA型、B型、C型、D型、E型肝炎があり、それぞれ、A型、B型、C型、D型、E型肝炎ウイルスによって起こります。これらの肝炎ウイルスのうち、A型、B型、C型、E型肝炎ウイルスが急性肝炎を起こします。また、B型とC型肝炎は慢性化することがあります。
A型急性肝炎はA型肝炎ウイルス(HAV)が原因で起こり、慢性化することはありません。散発性急性肝炎に占めるA型肝炎の割合は約40%で、急性ウイルス肝炎の原因としては最多です。
近年では海外での感染者が増加しています。一度感染すると終生免疫が成立しますが、わが国では幼少期の感染が減り、抗体保有率が低下しています。
潜伏期間は約1ヶ月前後(2~6週間)。成人では一般的に、急激な38℃以上の発熱で始まり、続いて黄疸、食欲不振、倦怠感、吐き気などの急性肝炎症状が発現します。
重症化や、まれに(約0.5%)高度の肝機能不全と意識障害をもたらす劇症肝炎を起こすこともあります。
しかし、5歳以下の小児では、ほとんどの場合症状が現れずに終わります(不顕性感染)。一度感染すると免疫ができ、生涯保たれます。
A型肝炎の原因は経口感染で、A型肝炎は流行地域への渡航、汚染された生牡蠣や貝の生食、汚染された水や野菜の経口摂取が原因でおこります。また、時には唾液や糞便を介した集団発生もあります。
A型肝炎は経口感染であることから、用便後や調理前や食前に手を洗う習慣は大切。特に危険地域では生水や生鮮食品の摂取をさけることが大切です。また、冬~春先には生鮮食品、特に生牡蠣の摂取には注意が必要です。
我が国では1994年10月からA型肝炎ワクチンを受けることができます(16歳以上、任意接種)。費用は病院によって違いますが、およそ1回8,000~12,000円で、3回打ちます。それぞれの間隔は2回目は1カ月後、3回目は6カ月後です。
流行地域への旅行者や感染の危険がある職業(福祉施設職員など)はA型肝炎ワクチンを受けるべきでしょう。
一般的には血液検査を行います。A型肝炎の診断は血中のIgM型HA抗体の検出で可能です。また、血清や糞便からのHAV RNA検出は、他者への感染のリスクの判定に有用です。
2週間程度の入院による安静と点滴により改善します。
B型急性肝炎はB型肝炎ウイルス(HBV)が血液や体液(だ液、精液、膣液)を介して感染し、肝障害をきたす疾患です。
潜伏期間は1~6ヶ月。症状としては食欲不振、悪心・嘔吐、右上腹部痛、上腹部膨満感が出現します。また、B型急性肝炎の約2%が劇症肝炎を発症します。
B型急性肝炎の感染経路は、性行為が55%、針刺しや手術など医療行為に伴うものが5%、その他は入れ墨、針治療、輸血などですが、感染経路が不明な場合も多くあります。
予防はワクチン接種で行えます。費用、回数、接種の間隔等はA型とほぼ同様です。特に伴侶がB型肝炎ウイルスキャリアーの場合や医療従事者はB型肝炎ウイルスワクチンを接種する必要があります。
B型急性肝炎の診断は血液検査で行います。血液検査でAST値、ALT値、ビリルビン値、HBs抗原、HBc抗体などを測定します。IgM型 HBc抗体が陽性であればB型急性肝炎と診断できます。
また、IgG型 HBc抗体が高力価であればB型肝炎ウイルスキャリアーからの急性増悪、低力価であれば一過性感染と診断できます。
HBVは、さらに8種のジェノタイプ(遺伝子の型)に分けられます。日本人では「ジェノタイプC」がB型慢性肝炎の85%を占めますが、このタイプのHBV感染による急性肝炎が慢性化することは、ほとんどありません。
一方、ヨーロッパや北米に多い「ジェノタイプA」は日本人のB型慢性肝炎の2%ほどですが、このタイプのHBV感染による急性肝炎は約1割が慢性化し、日本で増加傾向にあります。
B型急性肝炎は基本的には保存的治療で急性期は改善します。しかし、1)ゲノタイプAの症例(慢性化があるため)、2)1ヶ月以上ALTが上昇している症例(遷延化症例)、3)1週間以上の間隔でHBV-DNAが上昇している症例、4)T. Bil値10mg/dL以上、またはPT活性が40%以下の場合(重症化や劇症肝炎が考えられる)場合は、抗ウイルス剤として核酸アナログ製剤であるラミブジン(ゼフィックス)を投与することもあります。
C型急性肝炎はC型肝炎ウイルス(HCV)の初感染により肝障害をきたす疾患です。
症状としては食欲不振、悪心・嘔吐、右上腹部痛、上腹部膨満感が出現することがあります。
しかし、A型急性肝炎やB型急性肝炎に比べて症状が軽いため、大多数の人では自覚症状がありません。
また、C型急性肝炎は20~40%はウイルスが消えて肝機能も正常化しますが、60~80%は慢性肝炎へ移行します。
慢性肝炎になると初感染から20~30年で肝硬変へ移行し、肝細胞がんを併発するようになります。
原因としては、輸血、静脈からおこなう薬物の乱用、入れ墨、ピアスの穴あけ、針治療、医療行為に伴う針刺し事故などが考えられます。
予防法としては有効なC型肝炎ワクチンはありません。精度の高い核酸増幅検査が導入されたため、輸血によるC型肝炎ウイルスの感染はほとんど見られなくなりました。
しかし、医療行為に伴う針刺し事故による感染が多いので、医療従事者の感染対策が必要です。また、入れ墨(タトゥー)や経静脈的薬物乱用で感染することもありますから、注意が必要です。
採血をして血清中のHCV抗体を測定することにより、感染の有無を調べることができます。C型急性肝炎では、HCV抗体が出現する以前に、HCV-RNAを検出することができるので、HCV-RNAの測定が早期診断の検査法となります。
C型急性肝炎と診断された場合には、感染から6カ月以内にインターフェロン(ウイルスの増殖を阻害する薬物)治療を行うと、90%以上の例でウイルスを駆逐することができます。
D型ウイルスはB型肝炎ウイルス感染者の数パーセントに重複感染すると言われています。D型ウイルスの複製と増殖にはB型肝炎ウイルスを必要とするのでD型肝炎ウイルスはB型肝炎ウイルス感染者のみに感染し、通常は単独で肝炎を発症することはありません。D型ウイルスはB型肝炎の重症化や劇症化に関与しています。
E型肝炎は上下水道が未整備な地域で散発的に、あるいは飲料水を介して集団急性肝炎として発生する肝炎です。また、E型肝炎ウイルスはブタ、イノシシ、シカなどの野生動物にも検出され、人獣共通感染症と考えられています。E型肝炎は東南アジア、北アフリカ、メキシコなどの熱帯地域での流行が多く、わが国では「輸入感染症」と考えられてきましたが、海外渡航歴のない国内は症例も見られます。
潜伏期間は2~9週間で、発症から数週間で回復し、慢性化はしません。症状はA型肝炎に似ていますが、胆汁うっ滞を起こしやすく(約60%)、まれに劇症化するという特徴があります。
E型肝炎は経口感染が原因で発症する肝炎で、増殖したウイルスは糞便に排泄されます。
流行地での生水、氷、非加熱食品の摂取は避けましょう。国内でも野生動物の生肉や豚肉が原因で発症することがあるので十分に加熱して食べることが予防になります。
入院による安静と点滴により1ヶ月程度で改善します。
急性ウイルス肝炎にはA型、B型、C型、E型肝炎があり、それぞれ、A型、B型、C型、E型肝炎ウイルスによって起こります。
これらの肝炎ウイルスのうち、A型とB型急性肝炎はワクチンにより予防が可能なため、A型肝炎ワクチンおよびB型肝炎ワクチンの接種を当院で行っております。ご希望の方は電話(03-4530-0277)でご予約をお願い致します。
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