トップページ > メタボリック症候群
内蔵脂肪型の肥満に、高血圧、糖尿病、高脂血症が重複した場合、一つずつの症状が軽くても、複数の病気が重なる事で動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中の危険性が高まる事が分かってきました。日本では、原則として腹囲(腹囲:男性では85cm以上、女性では90cm以上)に加え、血圧・脂質・血糖の中で異常値(血圧:収縮期圧130mmHg以上または拡張期圧85mmHg以上、脂質:中性脂肪150mg/dl以上かつ/またはHDLコレステロール40mg/dl未満、血糖:空腹時血糖110mg/dl以上)がニつ以上ある人はメタボリック症候群該当者、一つの人はメタボリック症候群予備軍とされています。
メタボリック症候群は、それまでシンドロームX、死の四重奏、マルチプルリスクファクター症候群、インスリン抵抗性シンドロームなどと様々な名称で呼ばれて来た疾患を、1999年にWHOがメタボリック症候群(Metabolic Syndrome)と言う名称を提唱して命名されました。
メタボリック症候群と診断された人では心血管イベントは1.8倍の危険度、脳梗塞発症に対する危険度は男性で3.4倍、女性で2.2倍、糖尿病の新規発症は2.3倍高く、腎疾患のリスクも約2倍とされています。また、肥満、高血圧、脂質異常、高血糖の4因子のリスクファクターの数との疾患の相関を、肥満・高血圧・高コレステロール血症・高血糖で検討すると心血管病の発症リスクは4因子中1因子で5,1倍、2因子で9.7倍、3因子以上で31.3倍となり、肥満・高血圧・高トリグリセリド血症・高血糖で検討すると心血管病の発症リスクは4因子中2因子で5.76倍、3因子以上で35.8倍となります。
メタボリック症候群は、8割以上が生活習慣に関連した原因が重なって発症します。反対に言えば、健康的な生活を送る事で、病気の予防が出来ます。日本人の死亡率の第2位と、3位は、心疾患、脳血管疾患で共に血管の病気です。遺伝、体質もありますが、多くは生活習慣に原因がある疾患です。食生活の改善、生活習慣の改善、そしてインスリン、脂質代謝のコントロールが重要な鍵となります。
2008年4月にメタボ検診(特定検診・保健指導)が導入され、メタボ該当者とメタボ予備軍はそれぞれ保健指導の対象者となります。ドクターの診断を受け、正しい知識を身につけ、治療を始めて下さい。
健康で快適にお過ごしいただくためには、現代病といわれる生活習慣病の予防に、まず、メタボリック症候群から脱出することが欠かせません。
メタボリック症候群の原因は、生活習慣病と同様に、食生活や運動不足、喫煙、飲酒、ストレスなど様々です。そのため、どういった対策を打つべきなのかは患者様によって異なります。そういった点も考慮に入れながら、生活習慣・ライフスタイルを見直し、必要であれば飲み薬を処方して、最適な予防・治療方法をご提案いたします。
特に、メタボリック症候群の予防と治療には、運動と食事が重要です。運動に関しては、中年を過ぎた場合には、過度な運動は活性酸素を増やすので出来るだけ避けて、軽い運動を定期的に行うことを薦めています。食事の後に運動すると吸収したエネルギーを燃やすことができるので、メタボを防ぐにはお勧めです。食事に関しては、カロリーを減らすことも大切ですが、早食いやドカ食いをやめて、できるだけ血糖やインスリンを上げにくいGI値が低い食品を摂取することを心がけ、急激な血糖の上昇を抑える事も非常に重要です。
また、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)と動脈硬化の関係はよく知られていますが、実は、悪玉コレステロールは、活性酸素の働きで動脈硬化を促進させています。従って、体の活性酸素を中和させてしまうと悪玉コレステロールだけでは動脈硬化は進行しません。
当院では医師による幅広い指導に加え、保健師や管理栄養士による指導、マクロビオティクスやファイトケミカルの紹介も行っております。食生活の改善や食事療法に是非お役立てください。
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敢えて、カボチャとスイカで比較すれば、皮の下が厚くても中身がスカスカなカボチャ型はメタボになりにくく、皮の下が薄くても中身がパンパンなスイカ型はメタボになりやすいと言えます。すなわち、カボチャ型は皮下脂肪が厚くても、内臓脂肪が少ないのでメタボになりにくい、逆にスイカ型は皮下脂肪が少ないにも関わらず内臓脂肪が多いので、メタボになりやすいと言えます。
そもそも、腹囲に関しても、実は内蔵脂肪蓄積の「代用の指標」として用いられているのであって、肥満の指標ではないのです。本来は、内臓脂肪の量はCT(コンピューター断層写真)を使って測定すべきですが、検診では全ての人にCTは出来ないので、腹囲で代用した結果、誤解が生まれていると思います。
また、食事に関しては、カロリーを減らすことも大切ですが、急激な血糖の上昇を抑える事も非常に重要です。血糖が急激に上昇するとインスリンが分泌され、血糖を下げます。しかし、多くの人は、血糖はインスリンの作用によって、ドロンと消えてしまうと言うイメージを持っていると思いますが、物質である「糖」がドロンと消えてしまうことはありません。実は、インスリンの作用で糖は「脂肪酸」に変わり、この脂肪酸が「脂肪」になって肥満の原因になるのです。ですから、肥満の予防には運動とカロリー制限も重要ですが、血糖を急に上げない事も大事です。
例えば、血糖やインスリンを上げにくいGI値が低い食品、玄米、そば、それからアルデンテのパスタなどは、野菜と同様にメタボの予防になります。逆に、血糖やインスリンを急に上昇させるGI値の高い食べ物、例えば、フランスパン、白米、うどん、甘い物など、は肥満の原因になります。もちろん、早食い、大食いはダメです。
そして、油は体積が小さくてカロリーが高いので揚げ物は是非避けるようにしてください。また、アルコールはカロリーの高いビールや日本酒より、抗酸化物質をたくさん含む赤ワインや芋焼酎のほうが良いと思います。
飢餓の時は、「燃費のいい人」が生き残ってきました。「燃費のいい人」というのは、倹約遺伝子(これを英語ではthrifty geneと言います)を持っていて、少ないエネルギーで非常に効率よく生命を維持出来ると言われています。また、倹約遺伝子を持っている人は、余ったエネルギーを脂肪として溜め込むと言うことがあります。従って、倹約遺伝子を持っている人は飢餓の時は生き残りやすい特権を持っている反面、一方では、ちょっと食べすぎると、それを脂肪として溜め込んで、肥りやすいと言えます。ですから、倹約遺伝子は、別名「肥満遺伝子」とも呼ばれています。
日本人がメタボになりやすいのは、この倹約遺伝子と関係あるかも知れません。事実、日本人は欧米人の2~3倍の高率で倹約遺伝子を持っているとも言われていますが、それが原因の一つとも考えられます。
メタボリック症候群外来は、お電話(03-5545-8177)でご予約をお願いいたします。
また、ご不明点等についても、お気軽にお問い合わせください。